法定相続分とは誰にどのくらい認められているか?
遺言など相続の指定をすることなく被相続人の方が亡くなられた場合は、法定相続分によって遺産が分割されることになります。
法定相続分とは、民法で定められた各相続人が有する相続分の割合のことをいいます。つまり、相続人のうち、誰が、どのくらいの割合で相続財産を受け取る権利があるかという定めです。
この記事では、法定相続分とは誰にどのくらい認められているのかについてや、遺留分、特別受益、寄与分などとの関係を解説します。
法定相続人とは
民法900条は、被相続人の一定の親族について、法定相続を規定しています。民法は、すべての被相続人が遺言を残して相続分を指定しているとは限らないことを考慮して、遺言がない場合には、被相続人との関係性に鑑みて公平と考えられる割合を定めています。
まず、配偶者は必ず相続人となります。そして、以下に記載する第1順位から第3順位の相続人がいない場合、すべての財産を法定相続します。第1順位から第3順位の相続人がいる場合は、それらの相続人とともに相続をすることになります。
なお、ここでいう配偶者は戸籍上婚姻関係にある人をいい、内縁関係の夫や妻には法定相続権は認められていません。
次に、第1順位は被相続人の子です。子が被相続人の死亡時に既に亡くなっている場合は、代襲相続といってその子が代わって相続人となります。第2順位は、被相続人の父母、祖父母等の直系尊属です。
つまり、第1順位である被相続人の子がいない場合、第2順位の直系尊属が配偶者とともに相続人となるということです。被相続人の父母が存命の場合は父母、既に他界されておりかつ祖父母が存命の場合は、祖父母が第2順位になります。
第3順位は被相続人の兄弟姉妹となり、第1順位である子や第2順位である直系尊属がいないときに、第3順位として相続人になります。
法定相続割合とは
配偶者と第1順位の子が相続人の場合は、それぞれ2分の1ずつとなります。
例えば、夫が亡くなり、妻と長男が相続人として遺された場合、妻が2分の1、長男が2分の1を相続します。
次に、配偶者と第2順位の直系尊属(被相続人の父母等)が相続人の場合は、 配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1を相続します。
最後に、配偶者と第3順位の兄弟姉妹が相続人である場合は、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1を相続します。
同じ順位で子、直系尊属、兄弟姉妹が複数人いるときは、それぞれの法定相続分は同じとなります。
例えば、夫が亡くなり、妻と長男長女が相続する場合は、妻は2分の1、長男と長女はそれぞれ2分の1×2分の1である4分の1を相続することになります。
ただし例外として、異父母の兄弟姉妹が相続する場合は、その法定相続分は同父母から生まれた兄弟姉妹の2分の1となります。
ちなみに、昔は、婚姻関係にない両親の間に生まれた非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1とされていました。
しかしながら、平成25年の最高裁判所決定により、このような差別は不合理な差別であり憲法14条に規定する「法の下の平等」に反するという判断がくだされたため、現在では非嫡出子であっても嫡出子と同じ相続分が認められています。
法定相続と遺留分
民法の法定相続は遺言等がない場合の相続割合ですので、有効な遺言を残すことにより、法定相続とは異なる相続割合を定めることも可能です。
例えば、相続人の中で、一番面倒をみてくれた子に財産のほとんどを残す、相続人以外でお世話になった第三者に財産を残すという指定もできます。
しかし、このような指定相続があったとしても、遺留分という民法上に定められた相続人の最低分の取り分を侵害することはできません。
なお、法定相続人の中で遺留分の権利を有する者は、 配偶者、子、直系尊属に限られ、兄弟姉妹は有しません。
遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権を行使することにより、遺留分相当の金銭を受領することができます。
ただし、遺留分権利者が、相続開開始と遺留分が侵害されたことを知った時から1年又は相続開始から10年間、権利を行使しなければ請求権は時効によって消滅してしまいます。
遺留分の割合は民法で決まっており、法定相続分の2分の1となります。ただし、直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分の3分の1となります。
例えば、妻と子が相続人であったところ、遺言により妻が相続人から外されてしまった場合、妻は法定相続分である2分の1のさらに2分の1である4分の1について遺留分侵害額請求権を行使することができます。
法定相続分と特別受益
例えば、二男のみ留学費用を出してもらっていた等、特定の相続人だけが被相続人から生前贈与を受けていた場合、法定相続分にしたがって通常に遺産分割をすると、他の相続人に対して不公平感が生じてしまいます。こうした不公平を是正する制度として「特別受益」があります。
つまり、被相続人から遺贈や生前贈与を受けた人がいる場合、相続開始時の財産にその贈与分を特別受益としてプラスし、全体を相続財産として計算します。
このような計算をすることにより、贈与分を考慮した遺産分割を行うことができます。
法定相続分と寄与分
被相続人の財産形成や、介護看護等の特別な貢献をしてきた相続人がいる場合、その他の相続人との公平をはかるために、寄与分という制度があります。
具体的には、相続財産から寄与分を差し引いて残りの財産を相続財産とみなし、遺産分割をすることになります。
寄与分の具体的な金額は共同相続人間の協議によりますが、協議で定まらない場合は家庭裁判所に審判を申し立てて決めてもらうこととなります。
最後に
以上が相続分を定める際の基本ルールです。法定相続が認められる人とその割合が具体的にどのように法律上定められているのか、法定相続と遺留分、特別受益、寄与分などの関連性等についてご参考になれば幸いです。