遺言書の検認手続について

遺言書の検認手続とは、公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言以外に必要になる家庭裁判所による遺言書の確認手続です。

この記事では、遺言書の検認手続の詳細についてご説明します。

遺言書の検認

遺言書が残されていた場合、相続手続は、その遺言書の内容である被相続人の生前の意思を確認することにより始まります。

そして、遺言書が公正証書遺言または法務局保管の自筆証書遺言ではない場合、つまり自宅等で保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言であった場合、その保管者(遺言執行者であることが多いです。)又はこれを発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認手続を請求する必要があります。

検認手続とは、おおまかにいうと、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで、遺言書を開封して遺言書の内容を確認する手続をいいます。

遺言書の検認をする目的とは

遺言書の検認の目的は、家庭裁判所が検認日現在における遺言書の形状、加除訂正、日付、署名などの形式面を確認することにあります。

また、そのように確認することにより、検認日後に遺言書が偽造、変造、破棄されることを防ぎ、相続人間の紛争を未然に防止することにあります。

また、同時に、被相続人が遺言書を残しているということを、相続人や他の利害関係者に知らせる目的もあります。遺言の内容を知った相続人としては、遺言の有効性を争う場合もあれば、遺留分侵害額請求権を行使する場合もあるので、そのような権利を行使する機会を確保する意味もあります。

なお、遺言書の検認手続は、あくまで外形的な確認手続であり、遺言書の内容の法的な有効性について判断するものではありません。

そのため、検認手続を経たからといって、遺言書の内容が有効なものであるということにはなりません。遺言書の有効性に疑義がある場合は、後日遺言無効訴訟等法的措置により解決を図ることとなります。

このように、検認手続は、遺言の実体や内容を審査するものではないので、万一相続人が検認手続を行わずに遺言書を開封してしまったとしても、その遺言が無効になるわけではありません。

ただし、検認手続を経ずに、遺言を執行したり、封印のある遺言書を開封したりした場合は、5万円以下の過料が課されますので注意しましょう。

なお、相続人が全員そのように同意した場合であっても、検認手続が必要である種類の遺言については、検認手続を省略することはできません。

遺言書の検認が必要な遺言の種類

上述のように、すべての遺言書に対して検認が必要となるわけではなく、公正証書遺言や法務局が保管している自筆証書遺言については検認が不要です。

理由としては、検認手続の制度目的が改ざん等の防止であるところ、公の役所である公証役場や法務局で保管している遺言書については相続人等による改ざん等の余地はないからです。

遺言書の検認手続の流れ

それでは、具体的には遺言書の検認手続の流れはどのように進むのでしょうか。

まず、遺言の保管者または遺言の存在に気付いた相続人等が、相続開始地である遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、遺言書の検認手続を申し立てます。申立てを受けた家庭裁判所は、遺言書の検認を行う期日を相続人全員に対して通知します。

ただし、通知を受けた相続人が、それを受けて検認に立ち会うかどうかは任意となっています。立ち会わなかった場合は、検認終了後に、裁判所からの検認済通知書を受け取ることができます。

指定された検認期日で、相続人の立会いのもとに家庭裁判所による遺言の検認が行われ、その結果が検認調書という書面に記載されます。検認が終了すると、遺言書原本の末尾に検認済証明書が契印され、家庭裁判所から申立人に返還されます。

検認済証明書には、事件番号、検認の日付、検認済である旨および証明の日付、家庭裁判所名、裁判所書記官が記名押印した証明文が記載されます。遺言書が検認証明付きとなったのちは、遺言の内容にしたがって、不動産や預貯金の名義変更などを行なっていくことなります。

必要書類や費用

検認手続に必要な主な書類としては、以下のようなものがあります。なお、以下は標準的な場合であり、相続人の種類によっては別途書類が必要になりますのでご注意ください。また、審理のために、個別に別途書類を求められることもあります。

  • 検認申立書
  • 遺言者が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
  • 相続人全員分の戸籍謄本

検認の申し立てにかかる費用としては、以下のものがあります。

  • 収入印紙800円
  • 連絡用の郵便切手

検認にかかる期間

申立てをしてから検認手続が終了するまでには、おおよそ1か月程度かかります。

また、申立てまでに相続人全員の戸籍謄本等必要書類を収集することにも一定程度時間がかかります。

注意しておきたい点として、遺言書がある相続の場合は、検認された遺言書と検認証明書が必要となるので、検認手続が終わるまで被相続人の預金口座からの引き出し、支払などはできません。

これによって被相続人の生活に支障をきたしてしまう可能性がある場合は、検認手続が不要な公正証書遺言等を選択したほうがよいかもしれません。

最後に

以上のとおり、自筆証書遺言と秘密証書遺言では検認手続が必要となることを覚えておいてください。

遺言書について検認が必要なケースや、検認手続の概要等についてご参考になれば幸いです。

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