事業承継と相続

これまで中小企業経営などで事業を経営されてきた経営者の方にとって、ご自身が高齢となったあとにどのように事業を次世代に承継していくかという問題は頭の痛い問題ではないでしょうか。

事業は、取引先や従業員等第三者の将来にも影響してしまうので、悩まれる部分も多いでしょう。

この記事では、事業を次世代に承継していくために知っておきたい事項をご説明します。

事業承継とは

事業承継とは、一言でいうと会社などが行ってきた事業活動そのものを後継者にバトンタッチすることです。

通常の相続では、不動産、動産、現金などモノの承継がほとんどとなりますが、事業承継となると経営のための資産や、会社のブランド、従業員や取引先、負債などの一切合切を引き継ぐことになりますので、通常の遺産相続とは別途考えることも多くなります。

事業承継を考えた際には、後継者を探す方法やM&Aで第三者に買い取ってもらう方法、また清算をするという方法があります。

日本の中小企業は後継者問題に悩んでいる

日本の企業の9割は中小企業といわれており、小さくても優良な中小企業が多いにもかかわらず、経営者の高齢化と後継者不足等の原因により廃業をせざるを得なくなっており、日本経済にとって大きな損失となっているといわれています。

そのような損失を避けて、次世代に事業承継をしていくためには、どのような選択肢があるでしょうか。

後継者への承継

経営者が高齢化してこれ以上経営に携わることが難しい場合、次の経営者候補を探すこととなります。子どもに事業を継ぐ意欲や才能がある場合は子供に承継することも一つですし、現在その企業で働いている従業員や役員から、適任な人を探しだして、経営者としての地位を継いでもらうことも一つの方法でしょう。

後継者に事業承継するときには、経営権となる前経営者が持っている株式を譲渡するとともに、これまで経営者がこなしている仕事やノウハウを、徐々に後継者に引き継いでいくことが必要です。ある程度時間をかけた育成を通して、他の従業員、取引先からもあたらしい後継者を認めてもらうようにして、スムーズな引き継ぎをしましょう。

また、中小企業の経営者は、個人的にその企業の借り入れに個人保証をしていることもありますが、事業承継をするときには、後継者に対し、そうしたマイナスの財産の存在も説明し、十分な納得を得て引き継いでもらう必要があります。

子供や従業員に引き継いでもらうメリットとしては、前経営者との人間関係が濃く、会社のこともよく知っていることが多いため、適任者が見つかった場合には、引継ぎも円滑に進むことが多いという点があります。

一方、業績が悪化していたり、債務超過だったりする場合には近しい人に承継させることにためらいを感じられるという場合もあるでしょう。

 事業譲渡やM&Aによる承継

事業譲渡とは、ある企業が別の企業に対して、一つの事業(ビジネス)ごと売り渡すという手法です。事業譲渡の場合は、法人自体は合併せず、対象の事業、契約、資産、人などを相手方に譲渡する形となります。

一方、M&AとはMerger & Acquisitionsの略で、2つの会社が1つの会社に統合したり、ある会社が別の会社を吸収合併したりするなど会社の組織ごと統合するという組織合併の方法です。

事業譲渡やM&Aを行う場合、その事業を受け継ぐ先は、別の会社です。売却によって、旧経営者に対しては売却資金が入り、かつ譲渡された事業も別の会社の指揮監督のもとで新たなに存続できるということがメリットです。事業に愛着があり手放したくない場合や、思ったような購入価格が提案されない場合はメリットばかりとはいえませんが、リタイア後に資金を手に入れつつ、これまで育てた事業を存続させられるという意味では選択肢の一つといえるでしょう。

清算する

後継者が見つからなかったり、事業承継先が見つからなかったりした場合には、清算という方法も選択肢の1つとなります。清算時には、会社の資産を全て売却して、そこから借金等の負債をすべて支払い、会社を消滅させます。負債清算後にお金が残った場合は、株主に配当されます。

清算のメリットとしては、後継者探しやM&Aのように事業の買い手が見つからないときに、すぐに実現できる解決策である点といえます。業績が悪化していて子供に引き継がせるのも不安な場合、廃業をしてしまって事業を閉じることで心配を一掃してしまうという利点もあります。

一方、清算のデメリットとしては、これまで築きあげてきた会社という存在がなくなり、価値がすべて失われるという点があります。清算する前に他の選択肢がないか慎重に検討してみることも必要です。清算によって処理する場合、すべての債務を弁済した後になおプラスの財産が残る場合は、株主が残余財産の分配を受けることができます。

一方、清算の過程でプラスの財産よりマイナスの財産(負債)の方が多いことが判明した場合、特別清算や破産といった裁判所が関与する手続によって厳重な処理を行わなければならないことがあります。

M&Aの場合には、会社の純資産額プラス営業権の数年分を足した金額で買い取ってもらえることが多いです。経営者が株式譲渡の形で売却した場合は、売却金額の20%が納税額となります。

一方、清算によって残余財産の分配を受ける場合は、その金額に応じた所定の所得税が課されます。

最後に

長年営んできた事業を承継するにあたっては様々な選択肢があります。それぞれの選択肢についてメリット・デメリットを検証して最適な選択肢を選ばれるのがよいでしょう。

選択に迷う場合は、弁護士・税理士など専門家に相談してみてください。

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