【特別縁故者】相続人が誰もいない場合の相続について

民法は配偶者、子、直系親族、兄弟姉妹など一定範囲の親族に法定相続権と順位を定めています。

ところが、被相続人が亡くなった時に、遺言もなくこれらの法定相続人もいなかった場合、特に手続をしなければ、相続財産は国庫に帰属し、国のものとなってしまいます。

しかし、被相続人の思いとして、法定の親族関係ではなくても、生前特に縁が深かった人に対して財産を残したいと思うことはあるでしょう。

こうした関係に対応するために、民法は、特別縁故者として、被相続人に法定相続人がいない場合に、特別に財産の分与を受ける権利が発生する人の存在を認めています。

この記事では、法定相続人が誰もいない場合の、特別縁故者の制度についてご説明します。

特別縁故者になりうる人

法的な相続人ではなくても、以下のような人々は特別縁故者と認められるケースがあります。また、個人のみではなく、学校法人や宗教法人など法人であっても、関係性によっては特別縁故者として認められるケースがあります。

被相続人と生計を同じくしていた人

いわゆる内縁関係や同棲関係等、法的な婚姻届を提出していないものの、実際の生活としては夫婦関係同様の生活を送っていたパートナーや、養子縁組はしていないものの、事実上の親子として生活を送っていた人がこれにあたります。

被相続人の療養看護に努めた人

被相続人の生前、病気の看護や介護にあたった人物も特別縁故者として認められることもあります。

ただし、介護や看護を仕事として報酬を得ていた看護士、介護士等はこれにあたりません。

被相続人と特別の縁故があった人物

例えば、被相続人と特別に親密な関係にあり、遺言書はないものの「自分が死んだら◯◯という財産は譲る」と約束を受けていた人や、親同然の師弟関係のような親密な関係があった人は、事情によっては特別縁故者として相続が認められることがあります。

特別縁故者としての申請方法

特別縁故者として財産の分与を受けるためには、相続財産管理人の選任と特別縁故者への財産分与審判の二つの申立てを家庭裁判所に行なう必要があります。

まずは、被相続人が亡くなったあと、法定相続人がいるかどうかがわからない場合は家庭裁判所に、法定相続人がいないことを前提として、相続財産の管理人を選任することを申立てないといけません。

このような申立てを行うと、相続財産管理人が選任され、裁判所で被相続人の戸籍を辿ったうえで法定相続人の捜索がされます。相続財産管理人が家庭裁判所に選任されると、官報で公告されます。多くの場合は、地域の弁護士が家庭裁判所から選任される運用です。

なお、この公告は、相続人を捜索する役割も担っています。公告から2か月が経過すると、相続財産管理人が債権者や受遺者に対し、申し出るようにさらに官報に公告します。すでに判明している債権者・受遺者がいる場合は、個別に伝える必要があります。公告期間終了後、申し出があった場合、相続財産管理人が債権者や受遺者への支払を行い、相続財産の清算を行います。

上記の債権者・受遺者への公告から2か月経過後、相続財産管理人が家庭裁判所に相続人捜索を申し立てることとなり、家庭裁判所は6か月以上の期限を設けて、法定相続人に該当する人がいないのか捜索します。

期間が満了しても相続人が見つからない場合は、相続人の不存在が確定しますので、特別縁故者として財産分与を受けたい人は、不存在の確定から3か月以内に特別縁故者としての申立てと財産分与の請求を行なう必要があります。

なお、相続人が存在することは明らかであって単に居所が不明という場合は、その人が相続人として認められるため、特別縁故者の財産分与請求は認められません。この場合、その人の失踪宣告をするか、不在者の財産管理人の選任をする等の対応方法があります。

特別縁故者への財産分与審判のためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、特別縁故者として申立てを行う必要があります。

この特別縁故者の財産分与請求が認められた場合は、特別縁故者が相続財産の一部または全部の分与を受けることになり、請求が認められなければ、相続人不在ということになり、被相続人の遺産は国庫へと移ることとなってしまいます。手続としては、財産分与審判申立書、申立人の戸籍謄本、被相続人の戸籍(除籍)謄本に収入印紙800円分と郵便切手を添えて提出します。

特別縁故者としての財産分与には相続税がかかる

遺産総額が3,000万円以上の場合、特別縁故者が財産分与を受けた場合で、相続税が発生し、さらに、相続税額の2割が加算されますので注意しましょう。

なお、通常の法定相続人であれば基礎控除等、配偶者の税額軽減、相次相続控除、障害者控除などの各種控除が受けられるのですが、特別縁故者には適用がないので注意が必要です。

相続人に障害者がいた場合、相続税を控除することができますが、特別縁故者が障害者であってもこれは適用されません。

特別縁故者がいる可能性がある場合、生前に準備しておこう

上述のように特別縁故者の申立ては、非常に手間もかかりますし、認められるとは限りません。亡くなった後に財産を渡したい相手がいる場合は、被相続人となる方は事前に準備をしておきましょう。

例えば、遺言書を作成しておけば、遺留分を除き、相続人でなくても相手に財産に残すことができます。

また、生前贈与という手段もあります。内縁関係のパートナーや、再婚相手の子供であれば婚姻や養子縁組をすることにより、法定相続人とするということもできます。

最後に

ここで説明した特別縁故者の制度は、相続人がいない場合にあくまで補充的に機能するものです。計画的に相続を実現したい場合は、遺言書などの生前対策を検討しておきましょう。

相続人が誰もいない場合の特別縁故者の相続方法についてご参考になれば幸いです。

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