遺留分侵害額請求は弁護士に相談すべき理由
遺留分とは、遺言によって法定相続と異なる相続が指定されていた場合でも、相続人に対して法律上最低限保障されている取り分のことです。遺留分相当の遺産を確保するためには、侵害者に対して遺留分侵害額請求をする必要があります。
遺留分侵害額請求は、親族間での金銭問題となるので、トラブルとなる可能性も高く、弁護士に相談することがおすすめです。
この記事では、遺留分侵害額請求の制度概要と、解決について弁護士に相談すべき理由についてご説明します。
遺留分と遺留分侵害額請求とは
遺留分とは、簡単にいうと、相続人に認められた最低限の割合です。原則として、被相続人には、自分の遺産を誰に引き継がせるか自由に処分する権利があります。
一方、それを徹底すると、本来の法定相続人に遺産が与えられないことによって生活が保障されないというデメリットがあります。
そこで、被相続人の意思尊重と遺族の生活保障の調整をはかるために、遺留分制度といって、法定相続分の一定の割合を一定の相続人に留保する制度が作られたのです。
遺留分が問題となるのは、遺言書が存在して他の相続人と比べて僅少な財産しか相続できない相続人や、相続分が全くない相続人がいるときです。
また、一部の相続人に対して、大きな額の生前贈与や遺贈が行われた場合も問題となります。
遺留分が侵害された場合、遺留分請求権を持つ人は、自分の遺留分を侵害して相続財産を多く得た人に対して遺留分侵害額請求権を行使することにより、一定の財産を取り戻すことができます。
遺留分侵害額請求ができるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人となり、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属(子と子の代襲相続人がいない場合)となります。
遺留分は、配偶者、子(代襲相続人を含む)については、被相続人の財産の2分の1、直系尊属については被相続人の財産3分の1になります。
そして、この遺留分割合に対して、それぞれの法定相続割合をかけたものが、それぞれが受け取ることができる最終的な遺留分になります。
例えば、配偶者しか法定相続人がいない場合に、愛人にすべての遺産が遺贈された場合は、配偶者は法定相続分に遺留分割合2分の1を乗じた分、つまり遺産の2分の1相当については、遺留分侵害額請求をすることにより取り戻すことができます。
なお、遺留分侵害額請求は、平成29年7月1日の法改正前は、遺留分減殺請求と呼ばれていました。従前の遺留分減殺請求では遺留分の財産そのものの返還を請求する制度でしたが、改正後の遺留分侵害額請求では、遺留分の侵害額を「金銭」で請求する制度に変わりました。
つまり、現行の遺留分侵害額請求では不動産などの現物を請求することはできず、あくまで金銭での支払いを求めていくということになります。
遺留分侵害額請求は弁護士に相談すべき
遺留分を取り戻すためには、侵害者に対して遺留分侵害額請求を能動的に起こしていく必要があります。相続人自身でも行うことができますが、できれば相続に詳しい弁護士に解決を依頼することがおすすめです。
正しい遺留分の計算と請求ができる
弁護士に相談することにより、自分が遺留分を請求できるか、いくらできるかということがわかります。遺留分を侵害されているようなケースだと、相続財産に何があるかということを把握していないことも多いですので、弁護士に調査や確認を依頼することができるので、見落としのリスクがさがります。
複雑な書面作成や法的手続を代行してもらえる
遺留分侵害額請求を行う際には、一般的には、まずは内容証明郵便で通知を行いその後当事者間の協議を行います。協議が整わない場合は、遺産分割調停や訴訟で、裁判所の力を借りて問題を解決してもらうことになります。
これらの一連の手続には法的な文章の作成力や、相手との交渉力、調停や訴訟を行うための法的知識が必要になります。弁護士は法律のプロですし、相続問題に詳しい弁護士であれば類似のケースを過去多く担当しており、相手や裁判所を説得するコツやノウハウがたまっているといえます。
弁護士に代行してもらうことにより、より早期・有利に問題を解決できる可能性が高まります。
親族と直接揉める精神的負担が軽くなる
相続問題で難しい点は、請求をする相手方が親族であることが多く、お金の話を直接交渉することに何となくためらいを感じてしまったり、請求することによって関係性が険悪になることを心配されたりする方も多いでしょう。
第三者である弁護士に間にはいってもらうことにより、直接親族と対峙しなければならないという精神的負担が軽減されることでしょう。
遺留分侵害請求を弁護士に相談する具体的な流れは
まずは、弁護士事務所に電話かメールで相談を申し込みましょう。弁護士事務所の探し方は知人などがお勧めしてくれる事務所や、インターネットなどで遺留分侵害請求事件の解決数がある程度多そうな事務所をあたるなども一つです。
相談は、事務所によって無料で実施するところもありますし、1時間5,000円から10,000円程度の相談料で実施するところもあります。
相談では、担当弁護士が、どなたが亡くなり、どのような相続人がいて、どのような相続関係が生じているか、問題となっている遺言や贈与、相続財産についてわかっている範囲など事実関係のヒアリングをしますので、これらの情報についてメモなどにまとめていくと話がスムーズでしょう。
そのうえで、相談者の今後の希望を伺い、遺留分はどの程度取り戻せそうか、どのように交渉を進めていくか、という提案がなされます。相談の結果、弁護士への依頼を決めた場合、相続財産や相続人の範囲の調査に入ります。
そして、相手方に遺留分を請求する意思表示をするために、通常配達証明付き内容証明郵便を送ります。内容証明郵便は、送付した文書の内容を、配達証明はその郵便が配達されたことを郵便局が証明してくれるため、遺留分侵害額請求の時効の進行を止めるために活用されます。
その後、相手方と具体的な交渉に入り、それでも解決しない場合は、遺産分割調停・裁判へ進行していきます。
最後に
以上が遺留分制度のポイントです。遺留分侵害額請求の概要や、解決を弁護士に相談すべき理由についてご参考になれば幸いです。