遺言書作成を弁護士に任せるメリットとは
ご自身の遺産を誰にどのように残したいかについてご希望がある場合、遺言書の作成を検討される方も多いでしょう。
遺留分を意識する必要はありますが、遺言書を残すことにより法定相続分とは異なるご自身の意向を反映した次世代等への財産継承をしていくことができます。
遺言書は自分で作成したり、行政書士や司法書士に作成を依頼したりことも可能ですが、可能であれば、弁護士に作成を依頼することをおすすめします。
この記事では、弁護士に遺言書の作成を依頼することによって得られる様々なメリットについてご説明します。
希望を反映した遺言書が作成できる
弁護士は法律文書を作成しなれている
遺言書を作成する目的は、ご自身が実現したい相続の内容を正しく書き残すことです。
しかし、遺言書は法律文書ですので、日ごろ法律文書等を書きなれていない一般の方が、自らの伝えたいことを正確に遺言書に書き起こすことは難易度の高い作業です。
たとえば、通常用語を使って文章を書くことにより用語の解釈に疑義が生まれてしまったり、記載内容同士に矛盾がでたり、誤記をしてしまう可能性もあります。
このように実際に伝えたかった内容が伝わらない文章の遺言を作ってしまうと、死後その解釈をめぐって遺族が争いを起こしてしまう可能性が高く、せっかく遺言書を作成した意味がまるでなくなってしまいます。
一方、弁護士は法律の専門家ですので、法律文書を書きなれています。
また、相続に詳しい弁護士であれば遺言書の作成経験も豊富です。複数の弁護士が所属するような事務所では、さらに法律家同士でのダブルチェックも期待できるかもしれません。弁護士は家庭裁判所の手続に関して代理権を持ち、家庭裁判所の紛争を常日頃扱っています。紛争の解決のプロであるということは、どうすれば紛争を回避できるかという紛争予防のプロでもあることを意味します。
そのため、プロである弁護士に遺言書の作成を依頼することで、遺言を作る方のご希望を正しく反映した適切な遺言書となる可能性がぐんと高くなります。
遺言内容に悩んだ時にも相談できる
遺言書を作成するにあたって、どういう内容にすべきか悩みが生じることもあるでしょう。
弁護士は、本人の包括的な代理人となり、依頼人の利益を最大限にするよう尽力してくれます。弁護士はこれまでの相続の紛争や判例についての知識があるため、どういう項目についてもめやすいのか等も踏まえて内容についてアドバイスをすることができます。
特に、遺留分を侵害する場合、特別受益や寄与分の主張がされうる場合、相続財産の中に不動産が含まれていて評価が割れそうなとき、前婚の時の子供や認知した婚外子がいるなど、法的紛争リスクが高いような場合には、弁護士のアドバイスを踏まえて遺言書を作成することが望ましいでしょう。
相続財産を正確に調べることができる
また、後日相続トラブルを避けるためには、相続財産を正しく把握したうえで遺言書を作成する必要があります。遺言書から漏れている大きな相続財産があった場合には、結局その帰趨について後日揉める可能性があるためです。
ところが、ご本人といえども、ご自身の財産をすべて正確に把握しているとは限りません。調査するためには、各金融機関に照会したり法務局などにおもむいて不動産を確認したりする必要があり、手間も工数もかかります。
弁護士であれば、弁護士会照会などの制度を利用しつつ、相続財産に何があるかを網羅的かつスムーズに調査することができます。
遺言執行者になれる
弁護士は遺言執行者になることができます。遺言執行者とは、相続開始後遺言の執行を任せることができるように相続人から指定された特定の人物です。
弁護士は遺言書作成時から被相続人の方の意思をよく熟知していますので、遺言内容の的確かつスムーズな実行をしてもらうことができます。
法的トラブルになった時にも対応してもらえる
用意周到な遺言書を遺したとしても、残念ながら、相続開始後に相続人間などでトラブルになってしまうことは少なくありません。遺言書があるということは法定相続分どおりに遺産がもらえなかった、あるいは思った通りの相続ができなかったという相続人が一部に出てきてしまう可能性があるからです。
そのようにトラブルになってしまったとしても、遺言書を作成してもらった弁護士に引き続き対応をしてもらうことができます。遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所に対して遺産分割調停または遺産分割審判を請求することになります。そうした法的手続についても代理人となることができます。
ただし、弁護士といえども、利害関係が対立している相続人双方の代理人になることはできません。
とはいえ、裁判所における法的手続の代理人にはなれない行政書士や司法書士に遺言書作成を依頼していた場合に比べてアドバンテージがあるといえるでしょう。
最適な遺言書の作成形式を選択してもらえる
遺言書には法律上定められた作成方法のルールがあり、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。作成方法のルールに沿っていない場合、せっかく作成した遺言書も無効になってしまいます。
また、3種類の方法にもそれぞれメリット・デメリットがあるので、ご自身にあった方法の遺言書の作成方式を選択する必要があります。
自分で記載する自筆証書遺言は簡便かつ費用がかからないというメリットはありますが、開封するときに原則裁判所の検認が必要だったり、自宅で保管されていることが多いので、紛失してしまったり、相続人がその存在に気が付かなかったりするというリスクもあります。
公正証書遺言は手間と費用は多少かかりますが、法律のプロである弁護士や公証人が作成に関与してくれる上、作成した遺言書が公証役場に保管されるので安心度が高い方法といえます。弁護士に相談することによって、最適な遺言書の作成形式もアドバイスしてもらえます。
最後に
以上、遺言書をより有効に活用する方法についてまとめました。
弁護士に遺言書の作成を依頼するメリットについてご参考になれば幸いです。