遺留分の割合と計算方法について
遺留分とは、遺言等の定めにより法定相続分どおりの相続ができない場合でも、相続人が受け取ることができる最低限の相続財産の割合を定めたものです。
被相続人はご自身の意思で自己の遺産を誰にどのように相続させるかを決める権利がありますが、これを徹底すると、遺族の生活保障が十分ではなくなる可能性や相続人の期待感を裏切るということになってしまうことになります。
そこで、両者の利害調整を図った結果、遺留分という法律上の制度が生まれました。この記事では、遺留分の割合と計算方法についてご説明します。
遺留分とは
遺留分権利者とは
遺留分が法律上認められる人を遺留分権利者といいます。
遺留分権利者は、法定相続人の中でも配偶者、子(代襲相続人である孫を含みます)、父母や祖父母などの直系尊属に限られ、兄弟姉妹や、相続欠格・相続廃除・相続放棄した人は含まれません。
遺留分の割合
遺留分を計算する際には、まず遺留分全体が占める相続財産への割合である「総体的遺留分」を計算します。総体的遺留分の合計は、相続人が直系尊属だけの場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合には相続財産の2分の1となります。
次に、この総体的遺留分に、各相続人の法定相続分の割合を乗じたものが、各相続人が受け取ることができる遺留分となり、これを個別的遺留分と呼びます。
例えば、相続財産の総額が5,000万円であった場合で配偶者のみが相続人であったときの遺留分は、5,000万円×1/2=2500万円となります。
配偶者と子一人が相続人であった場合、総体的遺留分は5,000万円×1/2=2500万円となり、それぞれの個別的遺留分は法定相続割合をかけた1,250万円ずつとなります。
遺留分の計算方法
遺留分算定の基礎となる相続財産の範囲
遺留分割合がわかったところで、具体的にはどのように遺留分の計算をすればよいでしょうか。遺留分の計算をするためには、遺留分算定の基礎となる相続財産の範囲を確定したうえで、遺留分割合をそこに乗じる必要があります。
遺留分算定の基礎となる相続財産の範囲は、民法1043条に定められています。計算式としては、(相続財産)+(贈与のうち一定の範囲)―(債務)となります。
まず、最初の項目の相続財産とは、相続開始時の財産の合算になります。ただし、条件付きの権利や存続期間の不確定な権利が含まれる場合は、家庭裁判所が選任した鑑定人に財産評価額を定めてもらいます。
2番目の項目ですが、遺留分を計算する際に、相続人や相続人以外の第三者に生前贈与された金額も被相続財産の一部であったとして計算します。
このような計算をする理由としては、せっかく遺留分制度があったとしても、遺留分制度を避けるために被相続人が生前に特定の相続人や第三者に多額の金銭を渡していた場合などに、相続開始時の財産のみを遺留分産出額の計算対象としてしまうと、相続人に対して最低限の遺産を保障するという遺留分制度の目的を達成することができないからです。
ただし、遺留分の計算算式に算入される生前贈与の範囲は無制限ではありません。相続人以外の第三者への贈与については、原則として相続開始前の1年間に贈与されたものが対象となります。
ただし、1年以上前になされた生前贈与であっても、贈与した人とされた人双方が、その贈与によって遺留分権利者に損害を加えることを知りながらあえて行った場合は、対象となります。
一方、相続人に対する生前贈与についてはもう少し長いスパンで計算対象に含められます。相続人に対する生前贈与は、その相続人が相続で受け継ぐべき財産が前渡しされたものと同視できるため、「特別受益」として、相続開始前の10年間の贈与については、遺留分の算式上被相続財産に加算して含めることができます。
ただし、贈与の目的が、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の基本として受けた贈与」に限ります。
なお、2019年6月までは、相続人の一部に対する生前贈与については、贈与の時期に関係なく遺留分の算定対象として加算することができましたが、法改正により2019年7月1日以降に発生した相続については、相続開始前の10年間にされた生前贈与に限られることとなりました。
最後の項目である債務は、被相続人が有していた債務、つまり借金やローン、未払いの税金などマイナスの財産のことをいいます。相続人は、プラスの財産のみならずマイナスの財産も相続し、返済義務を負いますので、債務は遺留分の計算上相続財産からマイナスをします。
なお、被相続人の債務のうち、第三者の債務を保証する保証債務については、基本的に主たる債務者が返済をするだろうという考えのもと、遺留分の計算上控除の必要はありません。
遺留分の計算
ここまで解説してきたとおり、個別的遺留分の割合を、遺留分算定のための財産の価格にかけると、具体的な遺留分を計算することができます。
遺言で指定された相続分が、この遺留分と比べて少なかった場合は、侵害をしている人に対して遺留分侵害額請求を行うことにより、差額を支払ってもらうことができます。
最後に
遺留分の割合と計算方法についてご参考になれば幸いです。
遺留分の計算方法は複雑で、特に特別受益にあたるかどうかの判断などは慎重な検討が必要です。
遺留分が侵害されて解決にお悩みの方や、遺留分侵害請求を受けて対応に悩まれている方は、一度相続に詳しい弁護士に相談してみましょう。