遺産分割協議書の役割と作成時の注意点について
相続人が複数いる相続の場合は遺産分割協議を行って相続財産を分けることになりますが、この遺産分割協議の結果を書面にしたものを遺産分割協議書といいます。
では、この遺産分割協議書の役割や作成時に注意しておくべきことについて解説します。
遺産分割協議書の役割
遺産分割協議書は法律上作成を義務付けられているわけではないので、口頭による遺産分割協議も一応有効ではあります。
しかしながら、遺産分割協議書を作成しておくには以下のような様々な役割やメリットがあるので、作成しておくことをおすすめします。
後日の紛争リスクを予防する
口頭で遺産分割協議を行った場合、記憶違いや相続人の誰かが後日気を変えることにより、言った言わないというトラブルや、議論の蒸し返しになってしまうことがあります。
こうしたリスクを避けるためには、一度の遺産分割協議ですっきりと解決できるように、合意した内容を相続人全員が確認し署名捺印した書面として記録化することが必要です。
遺産分割協議書は、いわば相続人間の契約書としての役割を果たします。
法定相続分以外で不動産の相続をする際に必要となる
相続手続において、遺産分割協議書の提出が求められることもあります。
例えば、法定相続分と異なる割合で、相続人の誰かが不動産を相続する場合、その不動産の相続登記をするにあたっては、法務局から遺産分割協議書の提出が求められます。
また、査定額100万円以上の自動車を相続する場合に運輸局に提出を求められたり、株式の相続の際に金融機関に提出を求められたりすることもあります。遺産分割協議書は、外部に対して遺産分割協議の内容を正式に示す役割も果たしているのです。
遺産分割協議書の作成時の注意点
明瞭な記載をこころがける
遺産分割協議書の書き方には決まりはありませんが、後から誰が読んでも明瞭な内容となっているようにする必要があります。せっかく遺産分割協議書を作成しても、曖昧な記載や解釈が分かれる記載だと、後日の紛争リスクを予防できないからです。
まず、被相続人と相続人を特定して記載しましょう。被相続人の氏名、本籍地、住所、生年月日、死亡日を書き、相続人全員の住所と氏名、被相続人との関係性も書きます。
次に、相続人の誰が具体的にどの遺産を相続するのかを明瞭に記載するようにしましょう。
たとえば、不動産の相続の場合は、不動産登記簿を見ながら、土地の場合は所在や地番、地目や地積などを、建物の場合は家屋番号や建物の構造・床面積などまで特定して引き写しましょう。預貯金などについては、銀行名、口座種類、口座番号、口座名義人なども細かく記載しましょう。
なお、遺産分割協議書は、取得者が決まった一部の遺産のみについて順次作成していくことも可能ですし、遺産分割協議書締結後に新たな財産が見つかった場合の処理について取り決めておくことも可能です。
また、分割ができないような遺産を誰かが相続して、他の相続人に対しては代償金を払う場合、代償金の金額や支払期日等も明記しましょう。
なお、遺産分割協議書は、手書きでなくてもパソコンで作成しても有効です。遺産目録など記載内容が膨大になるようなケースもあるので、そのような場合は作成負担の軽減や誤記を避けるためにパソコンの利用がおすすめです。
相続人全員で確認を
遺産分割協議は相続人全員が参加し、合意していることが必要です。
そのため、一人の相続人だけが独断で作成することなく、相続人全員が分割協議に参加したうえで、合意内容が遺産分割協議書に反映されてと確認することが必要です。
自筆による署名と実印の捺印がおすすめ
遺産分割協議書に記載する相続人の住所や署名は、それぞれの相続人の自筆にすることがおすすめです。万が一、後々相続人の誰かが署名していない=合意していないというような主張をして、遺産分割協議書の有効性を争ってくるような事態を避けるためです。
同様の理由で、署名欄に捺印する印鑑も実印でそれぞれ捺印し、印鑑登録証明書を添付することが望ましいです。認印でも遺産分割協議書は有効に締結できるのですが、相続人の誰かが自分が捺印したものではないと言い出す可能性が否定できないからです。実印は通常そうそう他人に預けるようなものではないので、こうした主張をされてしまうリスクは認印に比べて圧倒的に低いといえるでしょう。
協議書が数ページにわたる場合は、連続した文書であることを証明するために、ページのつなぎ目に署名欄に押す印鑑と同じ印鑑で契印をしましょう。
また、遺産分割協議書は、各自が手元に保管して合意内容を見返すことができるように、相続人の人数分の通数を作成しましょう。複数の通数作成された遺産分割協議書が、全て同じ内容であることの証明として、署名欄に押す印鑑と同じ印鑑で割印を押しておきます。
最後に
遺産分割協議書の役割と作成時の注意点についてご参考になれば幸いです。
遺産分割協議書は重要な書類になるため、記載方法などに悩まれた場合は、相続問題に強い弁護士に相談してみましょう。