遺産分割調停・審判の必要手続と有利に進める方法

相続人間で遺産分割について話し合ったものの、残念ながら皆が納得できる合意に至らない場合、相続人全員が合意するまで、遺産を分割することができません。

こうした場合の解決策として、遺産分割調停や遺産分割審判といった裁判所を通じて解決を進める手続があります。

この記事では、これらの遺産分割調停・審判に必要な手続と、これらの手続を有利に進めるために知っておきたい事項についてご説明します。

遺産分割調停とその手続

まず、遺産分割調停とその手続についてご説明します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、当事者が家庭裁判所において遺産分割方法を話し合うための手続です。遺産分割調停では、1人の裁判官と2人以上の調停委員が中立的な存在として介入し、当事者の話合いが円滑にいくように手助けをします。

冷静で中立的な第三者が入ることにより、相続の当事者同士が不要に感情的になりすぎずに話合いを進め、建設的な合意点を見出すことが期待できます。

ただし、調停はあくまで当事者の話合いの延長となるので、調停委員会から出される遺産分割案には法的な強制力はなく、相続人の一人でもそれに納得しない場合は、調停は不成立に終わってしまいます。

一方、相続人全員が、調停での遺産分割案に合意した場合は、その遺産分割案は調停調書に記され、確定判決と同じ効力をもつこととなります。

遺産分割調停の申立て

遺産分割協議が整わない場合、相続人(または包括受遺者・相続分譲受人)は他の共同相続人全員を相手方として、遺産分割調停を申し立てることができます。

具体的な手続としては、遺産分割調停申立書を作成し、共同相続人の住所地の管轄裁判所や、当事者間で合意した管轄裁判所に申し立てます。

必要書類は、各家庭裁判所により異なりますが、基本的には以下のようなものがあります。

  • 連絡用郵便切手
  • 手数料として1200円の収入印紙を被相続人の人数分
  • 被相続人について出生から死亡までの連続した戸籍
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票等
  • 遺産に関する各種証明書類

遺産分割調停の進行

遺産分割調停の申立後、第一回期日の呼出状がすべての共同相続人に送達され、各自が定められた期日に出頭することになります。

出頭後は、基本的にはそれぞれ申立人と相手方は別の控室で待機し、交互に調停委員のいる調停室に入り、調停委員にそれぞれの主張を伝えることになるので、基本的には相互に顔を合わせず調停委員を介して話合いを進めることができます。

その日の調停でまとまらなければ、次回期日が設定され、話合いを繰り返していくことになります。調停期日の回数や期間に決まりはありませんが、平均的には1年程度かかることも多い傾向があります。

遺産分割審判とその手続

遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官が最終的な遺産分割方法を決定する手続です。法的拘束力があるという意味では訴訟と類似していますが、遺産分割については訴訟を起こすことができないので、審判により解決をはかることになります。

訴訟は公開法定で行われることが原則ですが、審判は非公開手続であることが原則です。遺産分割調停が不成立に終わると自動的に審判手続に移行します。

また、遺産分割については、調停前置主義がとられていないので、調停を経ずにいきなり家庭裁判所に審判を申し立てることも理屈上は可能です。

しかし、実務上は、まずは当事者間の議論を尽くすべしという考え方から、審判をいきなり申し立てても、裁判所の職権により、まずは調停に付されることが多い運用です。

審判では最終的に裁判官が判断をくだしますが、審判継続中に当事者が任意で合意に至り和解するケースもあります。

遺産分割調停や審判を有利に進める方法

遺産分割調停や審判を少しでも有利に進めるためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。

自分の希望を整理し優先順位をつける

調停や審判になっているということは、遺産分割協議において共同相続人間でどうしても折り合えなかったということですので、ご自身の希望を100%かなえることが難しいことも多いです。

そうした場合、どうしても主張したいこと、譲ってもいいことを整理したうえで、調停委員や裁判官に伝えていく必要があります。

調停委員や裁判官に与える心証も大切

手続を有利に進めるためには、調停委員や裁判官に与える心証も大切です。

例えば、相続財産の存在を隠したり、不都合なことについて嘘をついたりしたことが発覚すると、こちら側の主張の信頼性が低いという印象を与えてしまい、良い結果にはつながりにくいでしょう。

また、主張をころころ変えることも信頼感を損ないますので、問われたことへの回答に迷った場合は、一度持ち帰って再考してから返答するということも一つです。

また、必要以上にへりくだる必要はありませんが、調停委員や裁判官も人の子ですので、コミュニケーションにおいてマナーを守ることは必要です。誠実な態度で会話をする、挨拶をする、目を見てコミュニケーションするなどのマナーは意識しましょう。

弁護士に相談しよう

遺産分割調停や審判は、裁判所を通した手続となるので、複雑で専門的な知識も必要です。書類の準備を不備なく行い、調停委員や裁判官、相手方を説得しつつ、なるべく目指すゴールに近い結論をえるためには、法律の専門家である弁護士に相談し、代理してもらうことが得策といえます。

弁護士費用がご心配な方もいらっしゃると思いますが、着手金を抑えて、獲得できた遺産から成功報酬として払うという調整ができる事務所も多くあります。調停や審判に臨む際には、一度相続問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

最後に

調停や審判はご自身でもできない手続ではありませんが、相続の中でも特に紛争の大きいものや法的な問題点を含むものも多いところです。

専門家である弁護士の助力を得なければ難しい場合も多いことでしょう。遺産分割調停・審判の必要手続や、なるべく手続を有利に進める方法についてご参考になれば幸いです。

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