遺産分割協議の手順と進め方について

相続が開始して、相続人が複数いる場合、具体的にどのように相続財産を分けるかを相続人全員で協議して決定する必要があります。

この協議のことを遺産分割協議といいます。それでは、遺産分割協議はどのような手順で進めていけばよいでしょうか。

この記事では、遺産分割協議の手順と進め方についてご説明します。

遺産分割の手順

被相続人の死亡により相続が開始してから遺産分割協議を進めるにあたっては、大まかにいうと、以下のような手順を踏むことが必要となります。

①遺言の有無を確認

まず、被相続人が遺言書を作成していたかどうかの確認が必要です。遺言書がある場合は、遺留分という例外はありますが、遺言にしたがって遺産分割をする必要があるからです。

逆に、遺言が残されていなかった場合は、民法に定められている法定相続割合にしたがって相続が行われます。

遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが、公証役場に保管されている公正証書遺言や法務局に保管されている自筆証書遺言を除き、勝手に開封をしてはいけません。これらの遺言については、家庭裁判所で検認という手続が必要だからです。

また、遺言には、特定の人を「遺言執行者」として指定するという内容が含まれていることがあり、この場合は、遺言の執行のために必要な手続を進行してもらうため、その人に連絡を取る必要があります。

相続人と相続財産の調査

遺産分割協議は、すべての相続人が参加して実施する必要があります。

そのため、相続権がある人が誰かを特定する必要があります。

例えば、被相続人の前の婚姻関係で子どもがいる場合、代襲相続が発生している場合など、家族が知らない相続人がいる可能性もあります。確認のためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本を取り寄せる方法があります。

また、相続財産についても、どのようなものがあるのか、被相続人の生前に整理されていないこともあるので、調査と確認が必要です。

例えば、不動産については法務局の登記簿での名義の確認、金融資産については金融機関への確認などを行います。

なお、借金などのいわゆるマイナスの資産も相続の対象となるので、マイナスの財産についてもきちんと把握しておきましょう。マイナスの財産のほうがプラスの財産が多い場合は、相続放棄や限定承認などが有効な手段となりますが、これは相続開始から3か月以内に家庭裁判所で手続をする必要があるので、借金等の有無はなるべく早めに確認しましょう。

相続財産の範囲が確認できたら、財産をリストアップしておくと、その後の遺産分割協議がスムーズに進むためおすすめです。

遺産分割協議

きちんと調査しておく必要があります。相続人や相続財産の範囲を確認したら、相続人間で協議をする必要があります。

協議の方法は法律で定められているわけではないですが、対面や文書のやり取りなど、相続人同士が納得できる方法で行いましょう。各相続人の相続分は、遺言がある場合は遺言のとおり(遺留分を除く)、遺言がなければ法定相続分となります。

なお、相続人の法定相続分を修正する要素として、特別受益や寄与分があります。

寄与分とは、生前被相続人の財産の維持増加について特別の貢献をした人に法定相続分を超えて相続が認められることをいいます。

特別受益とは、相続人の一部が、被相続人から遺贈、婚姻や養子縁組のための生前贈与、生計の資本としての生前贈与を受けていた場合、相続人間の公平をはかるために、その贈与額を相続財産から差し引くよう計算することをいいます。

各相続人の相続分を確定した後は、それに沿って具体的に相続財産をどのように分けるかを決定します。

問題になりがちなのは、土地や建物、動産のように持分にしたがって分割できない財産がある場合です。こうした場合は、現物分割、代償分割(相続人の一人が不動産等を取得し、代償金を他の相続人に払う)、換価分割(不動産等を売却して金銭で分ける)、共有分割(一つの財産を複数人で所有する)といった分け方があります。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議で相続人全員の合意に至った場合は、合意内容を「遺産分割協議書」として書面化します遺産分割協議書は、例えば不動産の登記名義の変更など、その後の手続の際に必要になります。

遺産分割の実施

遺産分割協議書に沿って実際の遺産分割を行います。

また、遺産分割と並行して、相続税の申告・納付(一定額の相続財産がある場合)も行います。相続税の申告は、相続開始から10か月以内に行う必要があります。

遺産分割協議がまとまらない場合

遺産の分け方や持ち分などについて、相続人間の希望が食い違い、どうしても遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなります。

調停は、当事者の話し合いの延長ではありますが、第三者である調停委員や裁判官が間に入るため、よりスムーズに話が進みやすくなります。

しかし、調停で示された遺産分割案に、相続人が一人でも反対である場合は、不成立に終わります。

その場合は、原則として審判という手続に移行し、裁判所に遺産分割内容を判断してもらうこととなります。

遺産分協議後に新たに遺産があることが発覚した場合

遺産分割協議前に遺産の調査をしたにもかかわらず、遺産分割協議成立後に遺産が他にもあったことがわかる場合もあります。こうした場合は、その新たに発覚した財産についてのみ追加で協議をすることができます。

また、あらかじめ、遺産分割協議書に、今回の協議対象の財産以外に被相続人名義の相続財産の存在が将来的に判明した場合は、相続人の誰に帰属するというようにあらかじめ取り決めておくことも有効です。

最後に

遺産分割の流れについて大まかにおわかりいただけたでしょうか。遺産分割協議の手順や進行方法、やるべきことについてご参考になれば幸いです。

なお、遺産分割協議が紛糾してしまいそうな場合は、早めに相続問題に強い弁護士に相談してみましょう。

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