寄与分の基礎知識と計算方法

遺産分割にあたって、寄与分という被相続人への特別な貢献が認められ、法定相続分より多く遺産を相続できる場合があることをご存じでしょうか。

この記事では、寄与分の基礎知識と計算方法をご説明します。

寄与分とは

相続が発生すると、通常は法定相続割合や遺言に従って遺産分割が行われます。

しかしそれを徹底すると相続人間に不公平が生じることがあります。その不公平を解消するための制度が寄与分です。

寄与分とは、被相続人の療養監護につとめてきた相続人、被相続人が財産形成することについて貢献してきた相続人など、被相続人の生前に被相続人に対して大きな貢献をしてきた特定の相続人等がいた場合、その寄与に応じた多めの遺産分配をすることにより相続の公平性を図る制度です。

例えば、全く被相続人と生前疎遠になっていた二男に比べて、被相続人と同居しその財産形成や扶養や介護につとめていた長男に対してより多くの財産を分配するというような形となります。

寄与分が認められた相続人は、法定相続分や遺言において認められた相続分プラス寄与分を評価した遺産を受け取ることになります。

つまり通常の相続分の計算からは、後述するように少し変化した計算方法で遺産分割が行われることになります。寄与分は簡単に認められるものではなく、後述するように認められるためにはいくつかの要件があります。

寄与分が認められる人

寄与分が認められる可能性がある人は、基本的には法的相続人のみです寄与分制度は相続人間の相続の公平性を図るために生まれた制度であるためです。

そのため、被相続人の友人や知人などがいくら好意から被相続人に生前尽くしていたとしても、残念ながら寄与分として認められるものはありません。

なお、相続放棄をした人や、相続欠格等により相続権を失った人ももはや法定相続人ではないため寄与分は認められません。

しかし、この制度を徹底して法定相続人のみにしか寄与分が認められないとすると不公平があるという意見がありました。

例えば、姑や舅の介護を担ってきた子どもの配偶者などには、寄与に値する貢献が認められないと、現実から考えると不公平な結果が生まれることがあるからです。

そこで、2019年7月1日の法改正により、相続人以外の親族に対しても被相続人に対して特別な寄与をした人には、特別寄与料として金銭の支払いを請求できるという制度が設けられました。

どのようなものが寄与として認められるのか

それでは、どういった行為をすれば、寄与があったと認められるのでしょうか。

親子等にはもともとお互いを養う扶養義務があるため、単に同居して親の介護をしていた程度では寄与分が認められることは少なく、「特別の寄与」であったかが重要です。

報酬を受け取っていなかったという点や、少なくとも1年以上の長期間にわたって従事してきたという継続性や、片手間ではなく専従的に実施していたかどうかなどが考慮されます。

寄与分が認められうる事例には以下の5つのパターンがあります。

家事従事パターン

農業や商工業など被相続人が家業として行っていた事業に、ほぼ無償で従事して被相続人の家業や財産形成に寄与貢献してきたようなパターンです。

金銭等出資パターン

被相続人の事業に関して、金銭や財物を出資して、相続財産の形成に寄与していたパターンです。

たとえば事業資金や借金返済のために自分の財産を出資したり、事業用不動産などを提供したりしているような場合がこれにあたります。

ただし、この金銭等出資がプラスの結果を生み出し、相続開始時にそのプラスの効果が残存していることが必要となります。

療養看護パターン

相続人が、病気になったり高齢化したりした被相続人の療養看護をし、そのことにより他人の付き添い看護費用等の支払いを節約して相続財産の維持に貢献したと認められる場合です。

扶養パターン

相続人が被相続人を養って、被相続人が生活費等の支払いを免れるようにしたことにより、相続財産の維持に貢献したと認められる場合です。

上述のように、もともと直系血族や兄弟姉妹は相互に扶養義務があるので、扶養パターンで特別の寄与が認められるのは簡単ではありません。通常の扶養義務を超えて扶養していたと主張できる根拠が必要です。

財産管理パターン

被相続人の財産管理をして第三者に委託する場合の管理費用の支出を免れたり、被相続人の土地の売却などの交渉で売却価格をあげたりすることにより、相続財産の維持に貢献したといえる場合です。

寄与分の計算方法

寄与分が認められた場合の相続分の計算方法としては、相続財産からあらかじめ寄与分に相当する額を控除し、控除した後の相続財産を法定相続割合に基づいて分配します。

具体的には、寄与分がある人についての取り分は、(相続財産-寄与分)×法定相続分+寄与分=具体的相続分となり、寄与分がない人の取り分は(相続財産-寄与分)×法定相続分=具体的相続分となります。

具体例で考えると、父が被相続人で相続財産が3000万円、遺言書はなく法定相続人が長男、二男、三男であったとします。寄与分を考えない場合は、一人あたり1000万円ずつの相続となります。

仮に三男に寄与分300万が認められた場合、相続財産の3000万円から300万円を控除した2700万円を3等分することになります。

結果として、長男と二男は900万円、三男は900万円に300万を加算した1200万円を相続します。

最後に

以上のように、寄与分によって通常の法定相続とは異なる扱いがされることがあります。

寄与分の基礎知識と計算方法についてご参考になれば幸いです。

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