相続財産を正確に調査するためのコツは?

被相続人の方が亡くなり、相続が開始したときに、まず相続人がやらなければいけないことは相続財産を正確に把握することです。

被相続人の方の性格によっては、財産目録を作るなど相続財産のありかを相続人に示してくれている場合もありますが、すべての相続のケースについてこのようなことは期待できません。相続財産の正確な把握は、遺産分割協議の基礎となる大切な作業となります。

この記事では、相続財産を正確に調査するためのコツについてご説明します。

プラスの財産の調査方法

相続財産となりうるプラスの財産にはどのようなものがあるでしょうか。

例えば、土地建物などの不動産、預貯金・有価証券などの金融資産、自動車、宝石など貴金属、家財道具、美術品等の動産がありえます。ゴルフの会員権や電話加入権、知的財産権などの権利も相続対象となります。

不動産の調査方法

被相続人が有していた不動産を確認する方法として、自宅に登記事項証明書(又は登記済権利証)があれば簡単に確認することができます。

また、不動産を有している場合、毎年固定資産税を支払う必要があり、市町村から固定資産税の納税通知書が送られてきているはずです。

これらの書類を見れば、被相続人が有していた不動産を確認することができます。仮にこれらの書類が自宅に見当たらなくても不動産の調査は可能です。

例えば、不動産の固定資産税の支払先となっている市区町村の役所へ行き、「固定資産課税台帳」(名寄帳)を閲覧すれば、被相続人名義の土地や建物を把握することができます。

不動産の所在を把握した後は、遺産分割協議や相続税の納付のために、その不動産の評価をする必要があります。遺産の中でも比較的価格が大きくなりがちな不動産については、いくつかの評価方法があります。固定資産税、路線価方式、倍率方式、時価、不動産鑑定士の鑑定などの様々な計算方法があります。一般的には時価や不動産業者の査定サービスでの評価のほうが、固定資産税や路線価方式などよりは高額な結果となります。

預貯金・有価証券の調査方法

被相続人がどの金融機関にどのような口座を持っていたかを特定できる場合は、手続は比較的簡便にすみます。該当の金融機関に被相続人が死亡した旨を届け出れば、遺産分割協議までの口座の凍結を含め、諸々の相続手続の案内をしてもらえます。

どの金融機関に口座を作っていたか分からない場合は、自宅にあるキャッシュカードや通帳、金融機関からの郵便物などから被相続人が利用していた金融機関が特定できます。

また、弁護士に依頼して、各金融機関に対して照会をかけてもらうことにより特定可能です。被相続人が利用している金融機関が判明したら、その金融機関に対し残高証明書や預金取引明細の発行を依頼しましょう。預金取引明細をみると、残高や取引履歴、利用状況を把握できるので、不審な引出しがなかったかどうかも確認することができます。

手続としては、各金融機関によって異なりますが、相続人の印鑑証明書や戸籍謄本などの提出が求められることが多く、所定の手数料がかかるのが通常です。

なお、たくさんの金融機関に口座を作っていた場合などで、遺産相続時にすべての口座をもれなく把握することが難しい場合は、遺産分割協議書で「別の口座の存在が判明した場合は、別途協議する」旨を定め、とりあえず判明している口座について遺産分割を進めておくということも一つです。

有価証券・投資信託・国債 等をもっていて証券会社に口座を持っていた場合も手続としては、銀行の預貯金と基本的には同様となります。

借金などのマイナスの財産を調査する方法

プラスの財産だけではなく、被相続人に借入れなどがなかったのかマイナス財産も必ず調査しましょう。特段手続をしないと単純承認となってしまい、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多かった場合、相続人の方は借金を背負ってしまうことになります。プラスの財産とマイナスの財産を比較して相続すべきかどうかを検討するために、マイナスの財産がないかは必ず確認しましょう。

方法としては、金融機関からの請求書や返済の明細書、消費者金融のカードやクレジットカード、借用書や返済計画等債務を示すものがないか確認します。これらの請求書は郵送されてくることが多いので、被相続人に届く郵便物を転送によって受け取って確認するのが有効な方法です。

また、網羅的に調査をする方法としては、各信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に対し、被相続人の方の信用情報の照会をして、これまでのローンやキャッシングの履歴を把握するという方法もあります。

プラスの財産とマイナスの財産を比較した結果、明らかにマイナスの財産が多い場合は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申述をすることにより、相続放棄をすることができます。

相続放棄をすると、相続人の財産の一切を相続しないため、借金を返済する必要がなくなります。プラスの財産とマイナスの財産の差異がにわかにはわからず、相続を放棄するべきか悩む場合には、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を承継する限定承認という方法もあります。

なお、被相続人の方の債務の中で住宅ローンについては、被相続人の方が団体信用生命保険に加入していることもよくあります。団体信用生命保険に加入している場合、被保険者が死亡すると残ローンが保険の支払対象となって清算されるため、忘れずに保険に対して死亡の届出をしましょう。

最後に

相続財産の把握は、その後の相続を進めていくにあたっての重要な前提作業です。

相続財産を正確に調査するためのコツについてご参考になれば幸いです。

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